エッセイ

男5人ひとり旅・黒潮編~フェニックスシーガイアリゾート旅行~①

はじめに

帰りの列車の中、旅エッセイを作ってみたら面白そうだと思いついた。帰宅して何かの役に立つかもと思い、走り書きした紙を取り出して机に並べてみた。

 

午前1時を回った針が2時を指すころ、この馬鹿げた旅を思い出にするため、肌寒い中ペンを動かし始めた。

※このエッセイは、1997年3月の記事を基に加筆修正したものです。当時の時代背景や雰囲気を感じてもらえるように

原文を概ねそのままで記載しております。

 

 

 

<プロローグ:喜劇は悲劇から始まった>

3月16日午後4時30分。定刻から30分遅れて駅へ出発した。(提督の犬が散歩中逃亡したため)途中、犬の捜索をしながらだったので、

5時少し前に駅に到着することになった。理由は簡単。青春18きっぷと特急券が併用できるか聞き、できたら購入をするはずだった。

当時、18歳だった僕たちは、携帯電話というものもなく、PHSが出始めたばかりで、田舎で持っている人はほぼいなかった時代。

 

窓口の前で、マサが

『大将が聞くのが当然だろ?』

と、提督を指差した。それを見た提督は、私の方を向き

『やはり調べた人が聞くのが当然だろ?』と言った。

 

内気な私が断ったため、結局マサが聞くことなった。

『あのう、すみません。青春18きっぷは、おいくらですか?』

『12,300円』

横から、僕が『特急券!特急券!』と伝え、

『えーと、特急券と併用できますか?』

『できないよ』

駅員さんの無残な一言に、僕たちは最初の敗北をすることになる。

『そんなことができたら、東京までいけるでしょ』

と、容赦ない追い打ちをかける駅員。完敗だった。

 

世間知らずも甚だしい。穴があったら入りたい。そう思いながらも、卒業旅行中止の文字が見え隠れする中、計画を練り直すことになった。

第1日目:『各員、一層奮励努力せよ』

遅れてきた大物

3月18日午前5時20分。相川七瀬の声で起きる予定が、母親の声で起きることになってしまった。

ほんの少しの悔しさを胸に、集合時間に間に合うように用意をしバナナ1本を食べ、軽いジョグで向かった。

すでにかっちゃん以外はそろっていた。そしてほどなくして全員集合し、少し早いが駅へ向かった。

到着した小野田駅は人通りもなく、僕たち4人だった。

 

 

電車の時刻が近づくにつれて、車で来る大物に電話をすることになった。

提督が、

『そろそろ電話したほうが、ええやろ』

『どうぞ』

僕たち3人は、それに声を合わせて答え、公衆電話の方を指差したが、結局電話をしなかった。

 

 

そして、大物の服装やどんな車で来るのかの話になり、

『麦わら帽子とTシャツで来そう』『軽トラの荷台に乗っちょりそう』『タオル首に巻いちょりそう』

と、話は盛り上がり尽きることを知らなかった。

 

 

午前6時30分大物は到着した。運転手には、『ありがとう』の一言すら言わず、さもそれが当然のごとくドアを開け放ち、

僕たちの前に姿を現した。谷さん、その人だ。僕たちはわけもなく笑った。いやむしろ、爆笑だった。

 

とにかく面白かった。

 

出発と乗り換え

5人全員がそろい、改札口を出てホームへ立った。3月というのに息も白くなるほど気温は低く、周りを見ても僕たち以外は、会社員ばかり。

もし彼らが僕たちを見たら、「スペースワールドにでも行くのだろう」と、考えたかもしれない。

※スペースワールドは、かつて福岡県北九州市八幡東区に存在した宇宙のテーマパーク。提督が最寄り駅の枝光に住むことになり、

今後の5人になじみ深い場所となる。2018年惜しまれながら閉園。

 

しかし、それは間違いなのだ。別に偉そうに言うわけでもないが、さらに南のシーガイアに行くとは考えなかっただろう。

なんせ、山口県から行けば5,6時間はかかってしまう宮崎県にある施設だ。そんな少し昂揚した気持ちで僕たちは、周りを見渡していたのだ。

 

午前6時50分。列車に乗り込み一路、九州の玄関口である小倉を目指す。門司じゃないなかと言われるかもしれないが、山口県民からしたら、

小倉が九州の玄関口で大都会の認識なのだ。

 

1時間弱もすると小倉に着いた。そこで乗り換えのために、厠(トイレ)を探し、それからにちりん5号が出発するホームへ階段を上った。

ホームには、会社や学校に行く人で小野田駅とは大違いの人数に、少し驚きながら、田舎者感丸だしな僕たちは立っていた。

『財布が盗まれるかもしれん。気を付けんにゃいけん』

と、やたらに背後に気を配る提督。小刻みに後ろをチェックする姿は、どうみても彼の方が怪しく見えた。

 

そうこうするうちに、にちりん5号がホームに入ってきた。

 

やたらと『タイ』を語尾に付ける男VS頑固一徹おやじ

 

にちりん・・・その名前から素晴らしい列車を想像した僕はショックを受けた。ペンキが剥がれ、なおかつ座席は2人乗りだったからだ。

その上、自由席のドアの前ではなく、指定席のドアの前にいた僕たちは、シビアな現実が待っていた。

 

玉置浩二の田園を歌うどころではなかった。座るところがないのだ。通勤中のサラリーマンと一緒に座りたくないため、きょろきょろとしていたが、席はなし。

しかし、かっちゃんはだけは抜け目なく座っていた。仲間を見捨ててでも、自分の利益を追求する考え方は、もはや清々しいとさえいえる。

仕方なく1駅2駅は、連結部分で残りの4人は話をすることにした。

 

中津辺りで人が一気に降りたため、僕たちも座ることができ、提督と僕は座ることにした。そこで、4月からの大学生活について第二外国語は何を取るのか、

漢字検定を受験するだのたわいもない話をすることになったが、僕を不快にした言葉があった。

 

提督は、『~したいっタイ!』と、やたらと『タイ』を語尾に付けるのだ。おそらく誰がそれを聞いてもムカつくだろう。

だが僕は止めろとは言わなかった。なぜなら、そんなことを言えばもっと『タイ』とつけるに決まっているからだ。

万事、提督はそんなやつなのだ。

 

なぜだか話は盛り上がり、ファイナルファンタジーや悪魔城ドラキュラなど、最近のゲームの話になった。提督はゲームがライフワークで

その時の話をしながらもイヤホンでゲームBGMを聞いていたため、大きな声になっていたのだ。僕も夢中になってしまい、電車内では静かにという

ことを忘れてしまっていた。

 

かなり後ろの席では、谷さんが

『あいつらそろそろ注意した方がええんじゃないか、マサ』
『いや、車掌に怒られるのを見たい気がする』

と、言う話をしていたらしい。(ちなみにかっちゃんは、知らないおじさんと2人で座っています。)

 

つまり僕たち2人を噛ませ犬にしたのだった。ほんと男の友情とは恐ろしい。笑いのためなら、どんな悪逆非道なことも平気でできて

しまうのだなあと後に思ったものでした。

 

『もう少し、静かにしない?』

突然、前の座席の隙間からはげおやじが言葉を発してきたのだ。僕たちは何が何だか分からなかった。

 

ただこのおやじは頑固おやじだと思い、顔を見合わせた。そして、静かにすることにした。ウォークマンのない僕は、車窓を眺めた。

それから、列車の小気味よい音とマサと谷さんの小声だけが車両にむなしく響くのだった。

 

次章へ続く

男5人ひとり旅・黒潮編~フェニックスシーガイアリゾート旅行~②

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